沖縄の建築を楽しむー散策の視点

沖縄の建築を楽しむー散策の視点

はいさい、沖縄出身の見習い一級建築士松川です。

沖縄も涼しくなってきました、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

沖縄の建築を楽しむー散策の視点

友人や知り合った方々から「沖縄は何度か行ったことある」と言われるのは何度もあり、とても嬉しく、ありがたいです。

ただ、友人らの「沖縄」とは、私の生まれ育った沖縄ではなく、観光地としての沖縄…。(出身ではないのだから、当然です) 地元の人間が感じている沖縄の魅力を伝えるためには、生まれ育った「視点」、「当たり前の日常生活で、ふと目に入ってくる景色」を伝えることが一番だと思っています。

今回、「沖縄の建築を楽しむー散策の視点」と題して、日常の暮らしに必ず視界の中に入ってくる沖縄の「建築物」を紹介していきます。シリーズで紹介していくので、気になる記事だけ読んでもらっても構いません。1記事読むだけで、十分に沖縄旅行が楽しくなるだろうと確信しています。

シリーズ1. 「屋根」
シリーズ2. 「建築材料」
シリーズ3. 「アメリカ」
シリーズ4. 「風と雨」
シリーズ5. 「墓」
シリーズ6. 「シンボル」

※現在執筆中です。変更する場合があります。

シリーズ1.「屋根」

私の沖縄のイメージ

沖縄のイメージといえば、何を思い浮かべますか?「青い空、青い海」は冒頭によく出てくるフレーズですが、私個人でいえば、

アメリカ、基地、平屋、天ぷら、沖縄そば、エイサー、首里城、サトウキビの収穫…

思い出していくとキリがありませんが、冒頭に「アメリカ、基地」が入ってくる理由は、反戦・反基地派というわけではなく、私の暮らしの風景のに必ずあるものが、米軍基地のフェンスだったからです。

というのも、小学校からの帰り道に米軍基地があり、放課後に家に帰るかたわら、必ず見ていた風景だから強く印象に残っています。(余談ですが、基地だと思っていたのは米国総領事館であったと、高校生の時に気づきました、遅)。

あ、本題の「屋根」に入らなきゃ。

さて、次に「平屋」と出たのは、大学進学で関東に上京した際、あまりに三角屋根の住宅が多く、衝撃を受けた記憶があるからです。この時の「平屋」は、正確には「陸屋根」のことを指しています。

沖縄といえば「赤瓦」と想像する方も多いと思います。ただ僕は「平屋」の屋上に登って鬼ごっこやボール遊びなどをして、父や祖父に叱られた記憶が強くあるため、屋根といえば平たい陸屋根を想像します。

別シリーズで紹介しますが、戦後から現在に至るまで「鉄筋コンクリート造」の家が大半の住宅を占めています。そのため、屋根は洗濯物を干したり、将来の増改築を見越しての陸屋根が多くあります。戦後の簡易住宅として、設計図がいらず、手作りの家も多いことも一因でしょう。

外人住宅の屋根

https://riricoi.style/gaijinjuutaku02/より

外人住宅の屋根を見ると、陸屋根が多い。これも風景としては面白いですね。住宅にはブランコや、BBQセットが置いてあったり、フェンス越しにアメリカの生活を見ている気分で、ワクワクします。異世界のもの、と感じてしまうからでしょうか。

ただ、外人住宅の解体工事を任されたことがありますが、あまりの脆さに、

「よくこんな構造で保ってられたな」

という感想が出てきました。外人住宅の多くが法律などを無視して作ったものなので、考えられないくらい脆弱でした。確かに現在も利用されている外人住宅のほとんどは劣化が激しいですね。躯体をいじらずに内装をリノベーションしている喫茶店や雑貨屋さんが増えてきてますねー

赤瓦屋根

沖縄といえばこの屋根のイメージが強いですね。景観の中に赤瓦があるとほっこりします。沖縄県や地方自治体では赤瓦屋根を使用することを推奨しており、補助金もある程度は出ます。コンクリート打ちっ放しの住宅に少しだけでも赤瓦を使用すると、雰囲気がガラッと変わりますね。

ただ、やっぱり高価なもの。

王朝時代は赤瓦の使用は士族の中でも上級者しか使用を認められていませんでした。王令によって庶民は使用することは明確に禁じられています。

庶民も使用を認められるようになったのは明治以降です。庶民と言っても村の権力者しか使用できなかったようですが。昭和に入ってから一般家庭にも用いられるようにはなりましたが、爆発的に広まったのは戦後です。

戦前の糸満。糸満は貿易、商業、夜の街として賑わっていた。

セメント瓦の屋根

戦後の沖縄において早急な課題は「食料と住宅」でした。

住宅不足の問題は全国的なものでしたが、地上戦が行われた沖縄では特に深刻でした。廃材をコンクリートの材料として用いたり、ツーバイフォーの工法を輸入してせっせと建てていく。高射砲の薬莢を壁の材料としている住宅もあります。

さて、屋根。

台風の多い沖縄では木造の建築物は「屋根の重さ」が重要です。アメリカは沖縄に駐留している中で大きな台風を何度も経験し、その度に対策を迫られていました。

台風グロリアの影響。民政府本館

そこで赤瓦屋根を採用したいのですが、一般住宅の屋根まで供給が間に合わない。そのために開発されたのがセメント瓦ですね。復帰時には何十社も生産工場があったそうですが、現在は1社のみとなっています。

https://www.dee-okinawa.com/より

セメント瓦には製造した工場それぞれの模様が入っています。どんな模様が入っているのか見てみるのも楽しいですね♪

角出し屋根

平屋や低層の建物によく見かける、屋根にある出っ張り。

実はこれ、今は意味のないものです。

「角出し屋根」と言われるもので、将来の増築のために鉄筋を保護するためのもの。増築するときに周りにあるコンクリートを除き、鉄筋を露出させて上階の柱に繋ぎます。

ただし建築基準法の改正で、角出し屋根による増築は認められなくなってしまいました。残念です。

2010年に施工した実例を載せているブログがあったので、とてもわかりやすく、参考になります。(https://zouchiku.ti-da.net/e2712991.html

最後に…。

いかがでしたか?沖縄の散歩は屋根を見るだけでも飽きずに楽しめます。週末に適当に車を降りて、知らない土地を歩くのも、おすすめです。

次回の記事もお楽しみ♪